成果物:ワーキングペーパー成果物の政策へのフィードバックをめざして 1

成果物の政策へのフィードバックをめざして

これまでの研究動向と今後の展望

これまでの研究動向と今後の展望

STIG(Science, Technology, and Innovation Governance)教育プログラムの主要な柱は2つ。その一つは、教育を通じて科学技術イノベーション政策の立案、遂行に必要な知識やエビデンス構築手法を備えた人材を育成することです。そして、もう一つはこの分野に関わる研究の推進とその成果のフィードバックです。そこでここでは、これまでの研究の成果と今後の展望や課題について紹介していきます。

1.「教育」と「研究」の一体的推進のために

—— SciREX及びSTIGにおける研究の位置づけ

2011年に発足した文部科学省のSciREX事業は、客観的な根拠(エビデンス)に基づく政策形成の実現に向け、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の研究の推進と人材の育成の一体的な推進をめざしてきました。

その目的の一つである教育拠点の整備については、東大はSTIG教育プログラムを通じて人材育成の面でかなりの実績を上げてきました。一方、SciREX全体としてこの分野の研究を推進し、そこで得られた新しいエビデンスや政策形成プロセスなどの知見を政策にフィードバックすることが課題になっていました。

そのような状況の改善のために、政策担当者と研究者が協働する枠組みとして、まず取り組まれたのが、「重点課題」をふまえた研究プロジェクトで、2016年から2年間実施されました。これは、「SciREX 事業基本方針」で規定された「重点課題 https://scirex.grips.ac.jp/newsletter/1-2016-5/03.html」のうち、大学ごとに担当する分野とテーマを選択し、政策担当者と協働して研究プロジェクトを遂行する仕組みです。具体的な研究例については後述しますが、基本的には、最初の問題提起や課題設定は研究者の側が提示するケースが多かったという意味では、研究者主導の枠組みだったと言えます。

それに対して、2019年度から開始された「共進化実現プロジェクト https://scirex.grips.ac.jp/project/list.html」は、「研究者の学術的関心に基づく成果物を届けるのではなく、また行政官が行う委託調査でもない、両者が課題設定の段階から一緒に取り組むという、EBPM(エビデンスに基づく政策形成)の新しい実践」と定義されており、問題提起の段階から行政側と研究者が一緒に取り組む姿勢に重点が置かれるようになりました。こちらについても、具体的な研究プロジェクトは後述します。