STIGについて教育事業について「科学技術・政策・社会」をつなぐ人を育てる 2

「科学技術・政策・社会」をつなぐ人を育てる

SciREXで培った知見とネットワークの成果を社会に発信

3.SciREXで培った知見とネットワークの成果を社会に発信

——教育プログラム以外のさまざまな取組み

❖ サマーキャンプ/各拠点の学生・教員の集中的なグループワークで政策提言

SciREX事業の一つとして、毎年、夏季休暇中に2泊3日の研究型合宿サマーキャンプ(https://scirex.grips.ac.jp/programs/summercamp.html)が開催されています。SciREX事業に参加する5拠点6大学の学生や教員が集い、多様なバックグラウンドをもつ参加者同士が協働することによって、相互の理解を深めるとともに、ネットワーク形成のきっかけになることもめざしています。士が協働することによって、相互の理解を深めるとともに、ネットワーク形成のきっかけになることもめざしています。

このため、基調講演やパネルセッションなどの他、テーマごとにグループ分けされたチームで、それぞれフィールドワーク(工場見学、ベンチャー企業訪問など)、関係者インタビューなどを実施した上で、エビデンスに基づく政策提言を作成し、最終日の発表会で文部科学省などの政策担当者にプレゼンテーションします。

最初の頃は各大学がまわりもちで幹事校をつとめ、2012年度に第1回目が九州大学キャンパスで開催されて以来、茨城県つくば市、兵庫県淡路島市、愛知県犬山市、宮城県松島町などで開催していましたが、2017年度以降は、中央官庁、特に文部科学省の政策とのつながりを重視し、行政官へのヒアリングなどを行うため、東京の政策研究大学院大学で開催するようになりました。

学生にとってのメリットは、ふだんは交流のない他拠点の学生や教員と同じ空間、時間の中で、グループワークを通じて短期間で集中的にテーマに取り組み政策提言までしていくことでしょう。総合講評の結果、表彰された優秀な政策提言は、後日、発表の機会も与えられており、2020年1月には、「政策のための科学オープンフォーラム」(https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/10/t_200115.pdf)において、最優秀賞「高齢社会の医療費の行方」などがポスター発表されました。このように、社会的な発信力が鍛えられるという意味でも有意義な取組みとなっています。

❖ コアコンテンツ/「新しい学問分野」を理解するための用語を解説

「科学技術イノベーション政策の科学」は新しい学問分野で、しかもその対象とする領域は、経済学、経営学、政治学、社会学、工学、医学などきわめて広範囲であるため、基本的な知識をコアコンテンツ(https://scirex-core.grips.ac.jp/core)として提供しています。この分野を新たに学び始める学生だけではなく、科学技術イノベーション政策に携わる政策担当者や実務家にも読んでもらえるよう構成にも工夫しています。

執筆陣は、研究者、科学技術イノベーション政策に関与する政策担当者や実務家などで、各拠点大学と関係機関で構成されるコア・カリキュラム編集委員会で議論し内容を作り上げてきました。ただし、厳密な定義にこだわって体系化した教科書というより、ある時点で情報や内容を共有しておき、必要に応じてアップデートしていくという位置づけです。したがって、各項目の内容に多少齟齬があっても、むしろそれがきっかけになって、議論が活性化することを期待しています。

なお、このコアコンテンツはウェブサイトに掲載され、誰でも読むことができます(https://scirex-core.grips.ac.jp/all.pdf)。

❖ 行政官研修/研究者・若手行政官の協働でめざすEBPMの共進化

科学技術イノベーションのエビデンスをベースに、効果的に政策を立案し遂行していくためには、研究者側が主導して政策提言するのではなく、行政官自身が政策形成のあり方を変革する必要があるという認識が高まってきました。

そこで、数年前から科学技術イノベーション政策に携わる文部科学省の若手行政官を主な対象に、行政官研修(https://scirex.grips.ac.jp/programs/training.html)を年1回程度のペースで実施しています。これまでのSciREX事業で培SciREXの「共進化実現プログラム」(https://scirex.grips.ac.jp/project/list.html)は、文部科学省の具体的な政策ニーズに基づく研究課題に対して、研究者と行政官が一緒のチームとして研究を進めるEBPM(エビデンスに基づく政策形成)の新しいプロジェクトです。行政官研修は、研究者が若手行政官と同じテーマについて議論しプレゼンテーションするという意味で、「研究の共進化」に近いところもあり、EBPM推進のための第一ステップと言えます。ってきた数多くの知見や幅広いネットワークを活用し、エビデンスに基づいた政策形成手法とともに、実務現場での具体的な実践手法も学べる内容となっており、先に紹介したコアコンテンツも素材の一つとして利用しています。また、座学と同時に、行政官のグループワークに拠点の若手教員が参加し、行政官とともに共通課題に取り組み、調査・ヒアリングなどをして、それらをもとに共同発表するということも実施しました。

SciREXの「共進化実現プログラム」(https://scirex.grips.ac.jp/project/list.html)は、文部科学省の具体的な政策ニーズに基づく研究課題に対して、研究者と行政官が一緒のチームとして研究を進めるEBPM(エビデンスに基づく政策形成)の新しいプロジェクトです。行政官研修は、研究者が若手行政官と同じテーマについて議論しプレゼンテーションするという意味で、「研究の共進化」に近いところもあり、EBPM推進のための第一ステップと言えます。