インタビュー2019

インタビュー:2019

STIGプログラム 修了生から後輩へのメッセージ

 

医学系研究科消化管外科学 博士課程修了(2019年度卒)
附属病院胃食道外科 がん専門病院(常勤)および医学部附属病院(非常勤)勤務

佐藤 靖祥さん

これまで医療現場で疑問に感じることを解消する術を知らずに、大学院で腫瘍免疫の研究をしながら大学病院で外来も担当しという日々を過ごしていたところ、STIGのことを知り、その声を政策を作る人たちの側に届ける方法が学べるのではと思い登録しました。

必須科目の事例研究(科学技術イノベーション政策研究)では、グループに分かれて社会的課題を挙げそれを解決するための政策立案をします。私は医療をテーマとするグループに入りました。メンバーの専門分野がそれぞれ異なる中、自分の専門以外の意見も聞くことができたことは大きな刺激になりました。自分の専門分野の中ばかりにいると視野がどんどん狭まってしまいます。大学院で学ぶ中で視野を広げる機会として貴重でした。逆に専門性を生かして、医療の現場に詳しくない他の学生にアドバイスできたことも貴重な体験でした。

シナリオ・プランニングの授業では、不確実性が科学技術コミュニケーションの核であることを実感できました。もともとエビデンスに基づいて確率論で議論することは得意だったのですが、この授業ではエビデンスがないところに取り組む手法について学びました。また、以前に携わった地域医療に関連するであろうと思い受講した地域交通政策研究の授業では富山・丹後への現地視察があり、そこでは今の日本が抱える高齢化の課題を目の当たりにしました。地域の交通は高齢者の医療アクセスの手段であって、まちづくりは交通・医療とセットで考えていかなければならないことを実感しました。医療イノベーション政策の授業では、医療経済の概念において現場の実感が伝わっていないという印象を受け、医療分野における政策的課題(無駄な医療資源の配分、医師不足の問題など)について再認識させられました。

また、STIGの授業に参加する学生は、専門分野だけでなく出身国も多様です。東大の中で多国籍な環境に身を置くことができ、彼らとの交流を通して自分の視野を広げることができるのもまた一つの魅力だと思います。

STIG科目の先生の多くは政策の現場に近い人もしくは政策立案に長年携わってきた方です。現場にいるとシステムを変えることはなかなか難しいですが、授業やサマーキャンプを通してシステムを作る人に現場の声を伝えられたことは大きな喜びです。是非とも、STIGを意見交換の場にして、政策を作る人、作る立場に将来なるであろう人と、現場の専門家と将来の専門家との交流を深める、新しい変化へのきっかけになってください。