理論と実践で課題改善に貢献する
STIGでは「科学技術イノベーション政策のための科学」をテーマに、さまざまな研究と教育が行われています。私はその中でも特に、さまざまな政策形成過程における科学技術イノベーションの「取り扱い」に着目しています。
「科学技術イノベーション」というとき、無条件に「よい」ことであるかのような印象を、誰もが受けがちです。しかし、必ずしも「よい」ことだけとは限りません。研究開発には出費と労力を要するわけですから、見返りが十分でないのであれば、「無駄」とみなすこともできるでしょう。また、メリットを受ける人、何も受けない人、逆に迷惑を蒙る人など、関係性は人によって異なりますので、ある科学技術イノベーションの「善悪」を一概に判断することはできません。ですから、新たな科学技術イノベーションがうまれてきたときに、それをどう利用するかについて、関係する人々(ステークホルダーといいます)の納得が必要となります。
「科学技術イノベーション政策のための科学」というと、科学技術イノベーションの生産活動をより効率的に促進するための研究というイメージが強いかもしれません。しかし、新たに出てくる科学技術イノベーションを、さまざまなステークホルダーの納得に基づいて使いこなす方法についての研究も必要ですし、その部分を私は担っています。
科学技術イノベーションの導入には、それぞれの導入の現場で合意形成を図ることが必要ですし、また社会としてどのような科学技術イノベーションが必要とされているのかのフィードバックを研究開発の現場に返していく必要もあります。そのような現場での交渉、合意形成、熟議の仕組みについて、理論と実践の両面から、常日頃考えています。関心がある学生さんはぜひ「科学技術イノベーション政策のための科学(STIG)教育プログラム」にご登録・ご参加いただき、さらに小職の研究活動などにもご参加いただくことで、みなさんと一緒に、現場の課題改善に向けて貢献できればと思っています。