ポリシープラットフォームセミナー
04.15.2015

【開催報告】NEOPS A04-2 第3回国際シンポジウム/科学的専門家の役割:気候変動が水産に与える影響


NEOPS A04-2 第3回国際シンポジウム/第32回STIG PoPセミナー
科学的専門家の役割:気候変動が水産に与える影響~IPCC第5次評価報告書lead authorが語る~
“Role of Scientific Expert in Climate Change Impacts on Fisheries”
A talk by an IPCC-AR5 lead author

日時:2015年4月15日(水)13時~15時
会場:東京大学本郷キャンパス伊藤国際学術研究センター 3階中教室
言語:英語
主催:
科研費 新学術領域研究「海洋科学との接続性を考慮した海洋ガバナンスの構築」研究グループ(※「新海洋像:その機能と持続的利用」(NEOPS) 計画研究課題)
協力:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット

【開催報告】
今回のシンポジウムでは、気候変動の問題を題材に、科学的専門家(scientific experts)の役割について、自然科学者のお立場から話題提供いただくことで、より現実的な科学と政治との意味ある応答の姿を模索するために開催した。まず、ブリティッシュコロンビア大学水産センター(University of British Columbia (UBC), Fisheries Centre)のウィリアム・チェン(William Cheung)准教授から、気候変動が水産に及ぼす影響について、その予測をご自身の研究成果に基づきご発表いただいた。たとえば、温暖化により魚のサイズが小型化することで漁獲量が減少すること、また漁業への影響は地球上の場所によって大きく異なることなどが指摘された。また、IPCC第5次評価報告書の代表執筆者(lead author)として、IPCCのプロセスに参加したご経験を踏まえ、科学者の役割として、政策に有用な知識の生成、科学コミュニケーションに加えて、注目されていない重要な問題を特定し強調することを挙げられた。その実践として、UBCのNereusプログラムについてご紹介いただき、沿岸域に暮らす先住民への影響を捕捉する取り組みなどをご紹介いただいた。
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続いて、国立環境研究所地球環境研究センター気候変動リスク評価研究室長の江守正多さんより、政策形成における科学者の役割について、話題提供いただいた。江守さんは、Pielke (2007)のHonest Brokerの議論を参照されたうえで、IPCCにおける報告書の位置づけに関する議論とSchmidtによるresponsibleとirresponsibleというアドボカシーの2類型をご紹介いただいたうえで、気候変動の文脈でHonest Brokerとして機能する上でのお考えをお話された。
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その後、パネルディスカッションで、気候変動問題に関する科学者の役割についてお二人の間で議論していただいた。特に、主催者より「先住民への影響を強調することは、科学者が特定のステークホルダーに対してアドボカシー(肩入れ)することではないか?」と問題提起したところ、お二人の議論を通じて、それは先住民に対するアドボカシーではなく、公正な政策プロセスに対するアドボカシーであって正当性があることが明らかにされた点は、今回のシンポジウムの大きな収穫であった。(文責:松浦)

【プログラム】
13:00 – 13:15 開会挨拶/プロジェクト紹介(松浦正浩 東京大学公共政策大学院特任准教授)
13:15 – 14:00 基調講演:ウィリアム・チェンWilliam Cheung (ブリティッシュコロンビア大学水産センター 准教授)
14:00 – 14:30 気候変動の科学とアドボカシーに関する私見
江守正多(国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室室長)
14:30 – 15:00 質疑応答、ディスカッション

お問い合わせ先:東京大学公共政策大学院STIG事務局