SciREXサマーキャンプ
06.03.2025

[NEW] SciREX Summer Camp 2025 参加者募集!!!


◆開催概要
 科学技術イノベーション政策(以下、STI政策)における「政策のための科学」推進事業(以下、SciREX事業)では、世界的にも高水準な、政策立案人材の育成のための拠点を形成する目的で、平成23年度に「総合拠点(政策研究大学院大学-GiST)」及び「領域開拓拠点(東京大学-STIG、一橋大学-IMPP、大阪大学/京都大学-STiPS、九州大学-CSTIPS)」が採択されました。各拠点では、それぞれが強みを生かして、①客観的根拠に基づく政策形成に携わる人材や、②STI政策における「政策のための科学」という新たな研究領域の発展の担い手となる人材、③こうした政策と研究をつなぐ人材を育成するとともに、関係する基盤的研究を進めています。
 また本事業では、拠点間連携の一つの取り組みとして、各拠点の教員や学生が一堂に会し、共通のテーマでの討論、知見の共有、異分野交流を行う「サマーキャンプ」を毎年実施しています。「政策のための科学」の意義や多様性についてより認識を深め、多様なバックグラウンドの参加者とともに、具体的な課題を想定した政策提案プロセスを体験できる貴重な機会となっています。奮ってご参加いただけますと幸いです。

日程 2025年9月 5日(金)・6日 (土) ・7日(日)
 ※7~8月に、オンラインにて、事前学習会とグループごとの会合を予定
場所 政策研究大学院大学(東京都港区六本木)対面開催
 https://www.grips.ac.jp/jp/about/access/
参加費 無料
※旅費・交通費はSTIG予算より支給可能です。
参加者
政策研究大学院大学-GiST、東京大学-STIG、一橋大学-IMPP、大阪大学/京都大学-STiPS、九州大学-CSTIPSの学生・教職員
言語 日本語・英語
※オリエンテーションと最終発表会は日英同時通訳つき。グループワークは、日本語のみと英語のみのグループに分かれます。
※原則、3日間すべてのプログラムに参加できることが条件となります。

主催 文部科学省科学技術・学術政策局研究開発戦略課 政策科学推進室/SciREX基盤的研究・人材育成拠点
企画・運営 SciREX サマーキャンプ 2025 実行委員会/政策研究大学院大学SciREXセンター

◆お申込みはこちらから
 https://forms.gle/D4ZZrBcQLpSatdCj9

※申込時に、グループワークAからFの6テーマより第3希望まで選択してください。また、選択したテーマそれぞれについて、扱いたい事例や議論したい詳細を記入してください。グループ編成の際の参考にさせていただきます。(テーマ名は、主題・トピックに沿ったものであれば、グループ編成後に変更可能です)なお、応募状況によっては、ご希望に添いかねる場合もございますので、予めご了承ください。
※言語スキル(日・英)についても、グループ編成時の参考にいたします。
※申込時の個人情報は、サマーキャンプ事務局からのご案内や連絡、参加者用Slackワークスペースの作成以外の目的では使用しません。

◆今年度のテーマ
分断してゆく時代に求められる未来との対話
Dialogue for a future in this divided age

 地球温暖化や世界の人口増加に対応した食糧やエネルギーの確保、新型感染症対策などの地球規模の諸課題が先鋭化してきている。地球規模課題解決には、国境を越えた協力や科学技術・イノベーションの適切な管理と積極的活用が不可欠であるが、国際的に協力して取り組むべき課題への対応で分断が生じつつある。
 冷戦の終結後に国ごとの相違を超えて積み上げてきた国際秩序が危機に瀕し、覇権国家対民主主義国家の対立が進み、グローバルサウスの影響力も増大する中、各国の利害や考えは複雑に絡み合い、国家間分断はより際立っている。また、米国のトランプ政権の登場により、民主主義国の間でも米国とその他の国々や地域との分断も現実のものとなりつつある。
民主主義国家の内部においては、極右勢力が台頭するなど二極化や多極化が進み、国籍、人種、ジェンダー、政治的立場、宗教的信条や価値観、倫理観の分断が課題となっている。
 かつて「一億総中流」といわれた日本でも「経済格差の世代間連鎖」や「格差の構造的再生産」が教育・福祉・雇用等の領域を中心に注目されている。そこでは分断が進み、社会の寛容さも徐々に失われつつある。
 しかし、このような分断が進みつつある状況こそ、望ましい未来について対話する極めて重要な機会と捉えるべきではないか。「分断」状況に直面し、我々はむしろ社会の多様性に対する認識をより一層高める経験をする。前提としてきた思想や価値観を離れ批判的に思考し、より多くのステークホルダーに思いを馳せて多様な視点から望ましい未来を語りたい。そのためには、現実の対立や分断を超えた柔軟な発想を促し、未来のあるべき姿について共通の認識を得て、これに向かって努力していく道筋を描くことが重要である。
 望ましい未来-多様な人々を包摂する社会の実現-は、我々の思いと熱意の先にある。このサマーキャンプ2025で、科学技術・イノベーションの果たす役割に想いを馳せ、未来と、そして仲間と共に語り合おう。

◆グループワークテーマ

【A】AI時代の倫理と実世界共生:AI技術が人間を幸福にするための政策とは?
 ChatGPT等の対話型の生成AIの登場など、近年AI技術が急速に進化し人の業務を代替し、行政や企業活動、国民生活に係る広範な分野において業務の利便性や効率性の飛躍的向上が期待されている。他方で、AIによる偽・誤情報や不適切な情報の生成・拡散などの多様なリスクが顕在化しつつある。また、AIの活用によりこれまで行ってきた業務がAIに代替され職を失う人が生じることも懸念されている。このようにAI技術は大きな可能性を持つとともに、その適正な利活用について社会的に大きな課題を抱えている。
 我が国においても、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が成立したところ、、大きな可能性を持つAI技術が人間を幸福にするためには、AI技術が人間や社会に与える影響を適切に捉え、その倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues:ELSI)へ適切に対応することが急務となっている。

【B】人口減少社会における科学技術イノベーション(STI)人材政策
 我が国の総人口は、少子化の進行もあり2008年の1億2808万人をピークに2024年10月には1億2030万へと減少している。一人ひとりの多様な幸せが実現できる社会を目指して科学技術・イノベーション(STI)を進めていくためには、これを支えるSTI人材の確保が重要であり、この人材にはアントレプレナー思考や、産業界での活躍が期待されている。高度なSTI人材である博士人材は特に求められている。また、STI推進の枠組みを与える政策の企画立案及び、これに携わる人材も重要である。
 他方で、総人口が減少し、少子高齢化が進む中で人材の確保とその活躍を促す環境は厳しい。大学本務教員に占める若手教員の割合が減少傾向にあること、科学技術分野での活躍を志す女性の割合が少ないこと、研究者総数に占める女性研究者割合が諸外国と比較してなお低い水準にあることが指摘されている。さらに、学生や若手研究者の海外留学・海外での研究を志す者が減少するなどの内向き志向や、国際頭脳循環から我が国が取り残されているとの指摘もある。

【C】医療の社会実装を加速する政策デザイン
 研究から始まる医療が社会で実用化するまでには長い時間と多額の資金を必要とする。大学の研究成果を短期間で新規事業につなげる方法として、企業との共同研究、特許のライセンス、そして大学発ベンチャーの創出がイノベーションの担い手として期待されている。また医学の社会実装にかかる課題として、患者側からの要望やニーズと研究側との間にあるギャップが挙げられる。患者や臨床現場にあるニーズを適切に把握するための手法から、それを研究に橋渡しする仕組みづくりまで検討が必要とされている。

【D】気候変動のための国際的政策
 気候変動に関する国際的な政策の枠組みとしては、国連気候変動枠組条約があり、究極的な目的として、温室効果ガスの大気中濃度を自然の生態系や人類に危険な悪影響を及ぼさない水準で安定化させることを掲げている。1997年京都で開催された同条約の第3回締約国会議(COP3)では京都議定書が採択され、具体的な対策が進んだ。その後の曲折を経て、2015年にパリで開催されたCOP21において、「パリ協定」が採択され、2016年に発効した。パリ協定においては、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求することなどが設定された。現在は、この協定に基づき、全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新することを義務付けられるとともに、加えて、パリ協定の下で世界全体の気候変動対策の進捗状況を5年ごとに評価すること(グローバル・ストックテイク)などが規定されている。
 国際的な分断が進みつつあり、また、大国が内向きになりつつある今日、一部の国が協定から離脱するなど、気候変動のための既存の枠組みが大きな試練に立たされている。

【E】イノベーションとユニバーサルデザイン:誰一人取り残さないイノベーションとは?
 持続可能な開発を目指すSDGsでは「誰一人取り残さない-No one will be left behind」を目標に掲げており、この関連で社会のあらゆる層を包括するイノベーションであるインクルーシブ・イノベーションが注目されています。また、我が国においても、障がいの有無、年齢等にかかわらず、国民一人一人が社会の対等な構成員としてその尊厳が尊重され、社会における活動への参画を通じてその能力を発揮し、支え合いながら共生する社会の実現が目指されています。このような共生社会やインクルーシブ・イノベーションを実現するにあたって、ユニバーサルデザインが重要な役割を果たします。ユニバーサルデザインは、年齢、性別、文化、身体の状況など、人々が持つさまざまな個性や違いにかかわらず、最初から誰もが利用しやすく、暮らしやすい社会となるよう、まちや建物、もの、しくみ、サービスなどを提供していこうとする考え方のことです。介護を必要とする者や障がい者も利用する製品・サービスの提供にあたって、ユニバーサルデザインは大きな役割を果たすことが期待されています。
 最新の科学技術の成果も活用しつつ、製品、サービス、社会インフラにユニバーサルデザインを取り入れ、これを広く普及させるイノベーションを促進していくことが求められます。

【F】量子技術がもたらす情報社会に必要な社会的基盤の在り方
 量子技術の活用により、従来型の計算機では膨大な時間がかかる問題を高速で解決する量子コンピュータ、原理的に解読が不可能な量子暗号、精度や感度の高い量子計測・センシングなどの実現が期待されている。この量子技術の活用により、情報通信や製造、製薬・化学等、幅広い産業・社会分野で新たな価値を創出、さらには安全・安心な社会の実現への寄与が期待されている。この量子技術に関して主要国は力を入れて研究開発とその実用化に取り組んでいる。そのような状況の中で我が国がどのように量子技術に取り組むかが問われている。量子技術を社会経済システム全体に取り込み、従来型(古典)技術システムとの融合により(ハイブリッド)、我が国の産業の成長機会の創出・社会課題の解決にあたり、世界から注目される量子技術の研究開発に加え、多様な産業の量子分野への参画・協働・共創、産学官連携、産業界に開かれた量子技術の利用環境の実現、産学官の国際連携、海外展開などが我が国の課題として指摘されている。

◆タイムスケジュール(仮)

※1 7~8月中に「事前学習会(初学者向け)」と「各グループでの事前会合」を予定しています。詳細が決まり次第、追ってお知らせいたします。
※2「中間交流(発表)会」とは、ポスター発表を行い、他グループの学生やステークホルダーと意見交換や議論を行い、フィードバックに役立てていただく会となります。
※3 参加任意。STI政策立案に関わるステークホルダー(中央省庁・民間コンサルタント・シンクタンク等)が、その業務や研究・活動内容を説明し、STI政策立案についてのディスカッションやキャリア相談にも対応します。グループワークの過程で生じた疑問についても質問できます。

◆お問合せ
政策研究大学院大学 SciREXセンター サマーキャンプ事務局 宮田
scirex-summer@grips.ac.jp

◆その他(イベントの撮影・広報発信について)
本イベント中、SciREXセンターや拠点大学、関係機関のスタッフによる取材・撮影を行います。取材内容や写真は、事業の広報(各種サイト、SNS、広報誌、パンフレット等への掲載)や内部向けの報告書などで使用させていただきます。また、メディアによる取材・撮影も受け入れる可能性がございます。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。差しさわりのある方がいらっしゃいましたら、上記問い合わせ先までご一報ください。