●開催報告
勉強会では冒頭、司会の東京大学 松尾真紀子より、本勉強会の趣旨と前回の概要の共有を行ったうえで講演者から話題提供を行った。
まず初めに、NEDO技術戦略研究センター バイオエコノミーユニット長 水無 渉氏より、技術戦略の策定と、経産省の審議会をはじめとする政策立案当局への施策提言活動等のNEDOの取り組みの概要を紹介いただいたうえで、2021年2月に公表されたTSCフォーサイト短信レポート「環境・エネルギー分野へ貢献するバイオ産業 ―バイオものづくりの課題と可能性―」の内容についてお話いただいた。同レポートの、バイオの環境貢献度の可視化状況、バイオ製品の普及における課題(コスト高要因等)の分析と対応の紹介のほか、フラッグシップターゲットの設定とプラットフォーム形成による実証事例の重要性が指摘され、地域共生圏や官民全体連携の制度設計の事例の紹介があった。講演では、ありたい将来像を意識して社会的意義と経済合理性の両立を目指す、多様な主体間の連携が重要であるとの指摘があった。
次に、山口情報芸術センター[YCAM]バイオ・リサーチ主任研究員 津田和俊氏及び、山口情報芸術センター[YCAM]バイオ・リサーチ研究員 菅沼聖氏より、「バイオとアート・YCAMの取り組み」について話題提供をいただいた。前半は、教育・アート・地域との連携においてるYCAM自身のさまざまな取り組みを菅沼氏より紹介いただき、後半は津田氏から、特にバイオの分野におけるYCAMの取組(身近なものからバイオを学ぶキッチンからのバイオリサーチ、ゲノム弁当、森のDNA図鑑等)、各国における類似の活動、YCAMと企業・大学等との連携事例について、具体的にご紹介いただいた。質疑ではテクノロジーとアートの関係性、アートの役割、社会とのかかわりを多面的に展開する上での課題など様々な議論が行われた。
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【バイオエコノミーセミナーシリーズの目的】OECDで2009年のバイオエコノミーに関するレポートが作成されて以来、欧米各国ではバイオエコノミーをキーワードとする政策文書が策定され、バイオエコノミーに対する機運が高まっている。日本でも「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」することがバイオ戦略2019で謳われ、毎年バイオ戦略を更新しつつ推進していくとしている。他方、バイオエコノミーは非常に広範な概念であり、具体的な全容は十分に明らかでない。そこで本セミナーでは、国内外の動向について詳しい方々をお招きし、関係者間でバイオエコノミーの現状に関する情報共有を目的とする。その上で、日本にとってのバイオエコノミーの意義、強み、課題の検討につなげていく。
日時:2021年 3月10日(水) 9:00〜11:00
会場:Zoomによるオンラインで実施
主催:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット
共催:SIP (スマートバイオ産業・農業基盤技術)国民理解コンソーシアム、海外規制動向担当、立川雅司・松尾真紀子)、「広島から世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する Bio×Digital Transformation(バイオ DX)産学共創拠点」(プロジェクトリーダー:山本卓ゲノム編集イノベーションセンター長・教授)
参加者:35名
●プログラム
趣旨説明と前回までの概要:東京大学 松尾真紀子
①「バイオと環境エネルギー・産業技術〜NEDOの取り組み」
NEDO技術戦略研究センター バイオエコノミーユニット長 水無 渉氏
②「バイオとアート・YCAMの取り組み」
山口情報芸術センター[YCAM]バイオ・リサーチ主任研究員 津田和俊氏、京都工芸繊維大学デザイン・建築学系 講師・山口情報芸術センター[YCAM]バイオ・リサーチ研究員 菅沼聖氏