バイオエコノミーセミナー
09.08.2020

【開催報告】第95回STIG PoPセミナー/第1回第2回バイオエコノミー勉強会(基礎編)「バイオエコノミーの国際動向」「バイオ戦略2020とバイオエコノミー社会の実現に向けて」


【バイオエコノミーセミナーシリーズの目的】OECDで2009年のバイオエコノミーに関するレポートが作成されて以来、欧米各国ではバイオエコノミーをキーワードとする政策文書が策定され、バイオエコノミーに対する機運が高まっている。日本でも「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現」することがバイオ戦略2019で謳われ、毎年バイオ戦略を更新しつつ推進していくとしている。他方、バイオエコノミーは非常に広範な概念であり、具体的な全容は十分に明らかでない。そこで本セミナーでは、国内外の動向について詳しい方々をお招きし、関係者間でバイオエコノミーの現状に関する情報共有を目的とする。その上で、日本にとってのバイオエコノミーの意義、強み、課題の検討につなげていく。

日時:2020年 9月7日(月)13:00~15:40
会場:東京大学国際学術総合研究棟SMBCアカデミアホール及びオンライン(Zoom)によるハイブリッド形式
主催:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット
共催:SIP (スマートバイオ産業・農業基盤技術)国民理解コンソーシアム、海外規制動向担当、立川雅司・松尾真紀子)
参加者:34名

●プログラム
第1回:バイオエコノミーの国際動向
①バイオエコノミーの現状と課題:東京大学 松尾真紀子
②バイオエコノミーの国際動向:国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)藤島義之

第2回:バイオ戦略2020とバイオエコノミー社会の実現に向けて
①バイオ戦略2020と日本のバイオエコノミー政策:内閣府 政策統括官(科学技術イノベーション担当)付参事官 森幸子
②バイオエコノミー社会の実現を目指して:経済産業省 生物化学産業課 係長 和田竜也
ディスカッション

●開催報告
 まず、東京大学の松尾真紀子が本勉強会の趣旨、およびバイオエコノミーの現状と課題について述べた。バイオエコノミーは2009年のOECDの報告書策定以来各国の政策に取り込まれているものの、全米科学アカデミーの報告書(NASEM, 2020)でも指摘されるように各国で共通の定義がなく、バイオテクノロジーの社会導入で経済をけん引していくビジョン、生物資源でけん引するビジョン、生態系を循環させるサーキュラーエコノミー的な発想で展開するビジョンと様々なビジョンがある(Bugge et al 2016)。このように多様であることは、同床異夢的に展開できるメリットがある一方、戦略とする上では指標なども必要となり、一定の明確化も要される。日本のバイオ戦略では2030年までにバイオエコノミー社会を実現するとしていることから、日本としてはどのようにこの概念をとらえているのか、政府はどのような政策を行っているのかをまず把握することが肝要と指摘した。
 次に国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)藤島義之氏から、バイオエコノミーの国際動向について紹介があった。バイオエコノミーの定義や概念は、OECDや欧米各国で議論されており、昨今のトレンドとしては、SDGsの概念の下サーキュラーエコノミーやバイオエコノミーが統合されつつある点も指摘があった。また、世界レベルでの議論の場としてドイツが中心となって開催している国際会議GBS(グローバルバイオエコノミーサミット)やOECDにおける議論の背景や各種レポートが紹介された。その他、日米欧の各国レベルでの動きについての紹介があった。
 その後、内閣府 政策統括官(科学技術イノベーション担当)付参事官 森幸子氏よりバイオ戦略2020と日本のバイオエコノミー政策についてご紹介いただいた。2019年に策定された「バイオ戦略2019」で示されたグランドデザインでは、5つの基本方針が示され、その中で、目指すべき社会像と9つの市場領域が設定された。このグランドデザインを踏まえて当面バイオ戦略は毎年更新されることとなっている。これを受けて2020年6月に策定されたのが、「バイオ戦略2020」基盤的施策で、①新型コロナウイルス感染症対策関連研究開発の追加、②市場獲得を実現するデータ連携促進、③グローバルバイオコミュニティ・地域バイオコミュニティの形成、④バイオ戦略2019で提示された市場領域関連の展開、⑤バイオ戦略司令塔機能の強化、が掲げられている。
 最後に、経済産業省 生物化学産業課 係長 和田竜也氏より、経産省の①スマートセルインダストリー及び②バイオファウンドリへの取り組みをご紹介いただいた。ご報告では、バイオ(生物情報)とデジタル技術やAIの進展で、生物機能を最大限に活用する、「スマートセルインダストリー」において経産省が取り組んだ様々な成果を紹介いただいた。また、合成生物学等の技術開発に必要な装置をオートメーション化して集積した技術パッケージであるバイオファウンドリへの取り組みについても、諸外国の動向、経産省の取り組みについて、具体的にお話いただいた。