米連邦政府における業務改革とEA 〜事例研究〜 概要
東京大学公共政策大学院STIG教育・研究ユニットが主催に加わった第8回仮想政府セミナーが、約100名が参加して以下の要領で行われた。
日時 2013年2月22日(金)14:00 – 17:00
会場 東京大学法学政治学系総合教育棟(ガラス棟)101
主催 東京大学公共政策大学院 PADIT(情報通信技術と行政)研究プロジェクト/STIG (政策のための科学)教育・研究ユニット
社団法人 行政情報システム研究所
共催 東京大学政策ビジョン研究センター
参加者 約100名
プログラム
14:00-14:10(10)開会挨拶
東京大学公共政策大学副院長 城山英明
社団法人 行政情報システム研究所理事長 畠中誠二郎
14:10-14:20(10)問題提起―業務改革とEAを支える異領域間のすきまを考える
東京大学公共政策大学院 特任教授 奥村裕一
14:20-15:50(90)講演「人、プロセスそしてテクノロジー〜」
リチャード・バーク 元米国連邦政府行政管理予算局チーフアーキテクト
15:50-16:05(15)休憩
16:05-16:55(50)Q&A+ディスカッション「米国政府の事例に対する質疑と意見交換」
座間敏如 財務省CIO補佐官
平本健二 経済産業省CIO補佐官
宮沢修二 金融庁CIO補佐官
奥村裕一 東京大学
モデレータ 城山英明 東京大学大学院法学政治学研究科教授、東京大学政策ビジョン研究センター長
16:55-17:00(05) 閉会挨拶 奥村裕一
内容
今回のセミナーは、組織の中で業務と情報システムの統一的・体系的な導入を目指すための羅針盤となるエンタープライズアーキテクチャについて、その概念の開発と実装に努めてきた米国連邦政府の実態を把握し、その課題を抽出するため開催された。
このため、元米国連邦政府行政管理予算局チーフアーキテクトのリチャード・バーク氏による講演を主題に行い、これを受けて、城山英明法学政治学研究科教授、東京大学政策ビジョン研究センター長の司会によるパネルディスカッションを、日本政府のCIO補佐官らを交えて行った。なお、奥村裕一東京大学公共政策大学院特任教授が議論を深めるための問題提起を行った。
リチャード・バーク氏の講演では、米国連邦政府の以下の5事例が紹介された。
1. 旅券発行業務
2. 低所得者住宅支援業務
3. 金融機関に対する規制監督業務
4. 省庁横断のバックオフィス業務(給与)
5. 省庁横断のバックオフィス業務(出張バウチャー)
この中には、成功事例も失敗事例もあり、それぞれ詳細な説明があった。
パネルディスカッションでは、①チェンジエージェントの要件(政府の知識を持っていることなど)、②省庁間を超えてデータを共有する際のデータ定義の標準化、③政府内での競争メカニズムの導入の問題のほか、フロアの質問から④人事異動の短いサイクルへの対処などに議論が及んだ。
結論的には、失敗の要因は技術そのものではなく、むしろ、新技術がもたらす業務の変革を実現していく仲介役の人(チェンジエージェント)の要件(コミュニケーション能力、政府の業務の知識、専門家能力)とそれを支える業務サイド、予算部局を巻き込んだガバナンスが成否を左右することが明らかになった。
筆者は、日米両政府の大きな差異は、①政府職員に業務を理解したITの専門家の層の差、②予算当局との連携の差、③業務サイドを巻き込んだ意思決定のガバナンスの強弱にあるとの印象を持った。
文責:奥村裕一(公共政策大学院)