日時:2016年12月5日(月)17:00-18:30
場所:東京大学本郷キャンパス経済学研究科学術交流棟(小島ホール)第1セミナー室
講師:京 俊介氏(中京大学法学部准教授)
参加者:15名
司会進行:吉岡(小林)徹(東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻 特任助教)
【開催報告】
中京大学法学部の京俊介准教授に、日本の政策形成過程の分析手法の一例を講義いただきました。具体的には、京俊介(2011)『著作権法改正の政治学』(木鐸社)で行った、ゲーム理論を使った政策形成過程のモデル化と、事例に基づいた検証を紹介いただきました。同書では、著作権法の改正過程を題材に、一般の有権者と政治家が強い関心を持たない政策分野の政策形成過程に誰の意志や利益がどのように反映されているかを分析しています。特徴は、政策形成過程に関わるプレーヤーである官庁、利益集団、政権党それぞれの相互作用を、ゲーム理論に基づいて分析した点にあります。
同研究からは、(1)政権党が利益集団の意見を聞いても得にならない場合は、官庁は理想的な政策案を提示しそのまま通る、(2)政権党が利益集団の意見を聞いて得になる場合で、官庁が利益集団のロビイング能力を十分に理解している場合は、官庁は利益集団に妥協した案を最初から提示し、それが通る、(3)政権党が利益集団の意見を聞いて得になる場合で、官庁が利益集団のロビイング能力を十分に理解していない場合は、政権党が政策案を修正し、それが通る、という3つに別れることが示されました。
このモデルが現実に沿ったものであることを、それぞれ著作権法の改正の個々の事例から解説されました。
同時に、このような分析手法の限界についても触れられていました。第一に、官庁の政策選好の仮定の影響を受けてしまうこと、また、利益集団を単体のプレーヤーと見ていることの妥当性について批判がありうるとのことでした。第二に、理論に強引に事例を当てはめてしまう恐れがあることを指摘されていました。第三に、理論からの外れ値の分析も意味があることですが、これが捨象されてしまう懸念も言及されました。
京准教授は、良い政策であっても実現できなければ意味がないと強調されており、政策の内容の分析にくわえて、政策の形成過程の分析の重要さを説かれていました。
主催:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット
問い合わせ先:STIG事務局
STIG☆pp.u-tokyo.ac.jp(☆→@)
11.14.2016