ポリシープラットフォームセミナー
05.25.2016

【開催報告】第42回PoP Seminar: ベッドサイドから政策形成へ-新たな視点から日本の医療を考える


日時:2016年5月25日(水)17:00~19:00
会場:東京大学本郷キャンパス ダイワハウス石橋信夫記念ホール(情報学環・ダイワユビキタス学術研究館3階)
言語:英語

【講師】
Thomas Ciesielski(トーマス・チセルスキー)
“An introduction to US health policy(米国の医療政策の紹介)”
Instructor of Medicine and Fellow in Patient Safety and Quality Improvement, Department of Medicine, Washington University School of Medicine, St. Louis, Missouri, USA

Yasuharu Tokuda(徳田安春)
“Diagnostic Error in Japan: Misdiagnosis and overdiagnosis(日本の診断エラー:誤診と過剰診断について)”
Attending Physician and Medical Education Consultant, Headquarter of Japan Community Healthcare Organization Hospitals, Tokyo, Japan
CEO, General Medicine Education & Research Institute, Okinawa, Japan
Vice Director, Muribushi Project for Teaching Hospitals, Okinawa, Japan
Editor-in-Chief, Journal of General and Family Medicine

Hitoshi Honda(本田仁)
“Impact of antimicrobial use on the emergence of antimicrobial resistant organisms in Japan: The role of antimicrobial stewardship(日本における抗菌薬の使用と耐性菌の出現: 抗菌薬スチュワードシップの役割)”
Chief, Division of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Tama General Medical Center, Tokyo, Japan

Ryotaro Kato(加藤良太朗)
“Low value care in Japan(日本における低バリューな医療)”
Chief, Division of General Medicine, and Vice-Chair, Itabashi Chuo Medical Center, Tokyo, Japan
Visiting Researcher, the University of Tokyo Graduate School of Public Policy, Tokyo, Japan

【開催報告】
現役医師からみた日本医療の問題点を捉えることは、医療技術イノベーションの第一歩である。今回のセミナーでは、米国人の医師と米国留学経験を持つ三人の医師が、エビデンス(データ)の使い方をテーマに、医療問題について講演した。
米国ワシントン大学医学部内科のトーマス・チセルスキー氏は、米国の医療政策について語った。医療費の高騰が大問題となっている米国では、2010年に施行されたアフォーダブル・ケア法(通称「オバマケア」)のもとで、公的保険は質の担保された医療のみに支払いをするという制度を樹立した。しかし、エビデンスが限られているため、質の評価は簡単ではないことも指摘した。
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地域医療機能推進機構本部顧問の徳田安春氏は、診断エラーには過少診断(under-diagnosis)と過剰診断(over-diagnosis)があると説明。過少診断については、様々なバイアスの影響を説明したうえで、チェックリストの活用などを提案。過剰診断については、エビデンスに基づいて、検査や試験などを「賢く」利用することの必要性を説いた。
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都立多摩総合医療センター感染症内科の本田仁氏は、日本における抗生剤の使用状況について説明した。主に外来診療では処方する抗生剤の絶対量が問題となっている一方、入院診療では処方する抗生剤の種類が問題となっていると指摘。さらに、適切な抗生剤の選択を支援するシステム(antimicrobial stewardship)の確立が望ましいが、現時点ではそのために必要なエビデンスが不足している点も指摘した。
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板橋中央総合病院総合診療内科の加藤良太朗氏は、裏付けとなるエビデンスが乏しく、高価であるにも関わらず、日本中で使用されている薬剤が多いことの不思議を説明。さらに、経済的な理由などで十分な臨床試験が出来ないのであれば、アダプティブ・クリニカルトライアルや、データウェアハウスなど、新しい種類のエビデンスの導入も検討すべきではないかと説いた。
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それぞれの講演の後に行われたパネル・ディスカッションでは、主に日米の医療を対比しながら、様々な医療の問題点が指摘された。問題点が多すぎて悲観的になりがちであるが、だからこそ多角的なアプローチが必要であり、このようなプラットフォームが重要であるという認識を再確認した。
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主催:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット
問い合わせ先:
STIG@pp.u-tokyo.ac.jp