第16回GSDMプラットフォームセミナー:
グローバルヘルスに関する特別講演会(第2回)Margaret E. Kruk氏に聞く
日時: 2014年5月21日(水) 10:00~11:30
会場: 東京大学伊藤国際学術研究センター地下一階ギャラリー1
主催: 東京大学 Global Leader Program for Social Design and Management
共催: 東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット
参加費: 無料(要事前申込み)
【開催報告】
第16回GSDMプラットフォームセミナー(東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究ユニット共催)では、グローバルヘルスの分野で最近世界的に注目を集めている新進気鋭の学者Margaret E. Kruk氏から、2035年に向けたグローバルヘルス重要論点、特にユニバーサル・ヘルス・カバレッジの将来についてご講演していただき、内閣官房から小沼企画官、GSDMからは城山英明教授を交えてパネルディスカッションを行った。クルク博士は、最近では2013年度中に米国有数のシンクタンクであるCSISで「新興経済におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」と題するワークショップに若手ながら登壇するとともに、ローレンス・サマーズ氏をはじめとする名だたる執筆者と共にランセット誌に「Global health 2035: a world converging within a generation」というタイトルの論文を公表しており、今回の講演会はその内容を凝縮したものとなった。
グローバルヘルスの議論はどうしても発展途上国や新興国の話と矮小化されてしまいがちだが、決してそういうことはない。グローバルヘルスの知見によれば、あらゆる医療制度で医療費の増大が経済発展を促し、その結果として新たな医療需要を生み出すという循環が生まれる。そして、この循環がうまく制度的に裏付けられないと、医療財政の危機に直面するという。この示唆は、すでに発展を遂げた先進国にも等しく当てはまる。クルク博士は、新ミレニアム開発目標を達成するためにはユニヴァーサルヘルスカバレッジ(UHC)が必要だと指摘した。その中でも核心的な指摘は、アクセスと医療を理由とする貧困からの保護がUHCを構成する、というモデルである。UHCでは、疾病に苦しむたびごとに高額の患者自己負担が強いられる世界からの脱却が目指されており、ガーナ、メキシコ、チリ、ペルーをはじめとして、UHCの発展とともに公的に保障される医療サービスのパッケージが構築されつつある。今後は、先進的なUHCの取り組みを日米の間でシェアし、アフリカをはじめとする新興国に財政、知見、および人材育成の面から支援を講じられるかどうかが、UHCおよび国際保健の成功の鍵であるとされた。
グローバルヘルスの推進にとってUHCがどのような意味を持ち、日本と米国がどのような貢献ができるのか、どのような貢献をすべきなのかについて共有できた。
東京大学公共政策大学院特任講師 佐藤 智晶