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06/25
2018

【7月11日開催報告】ワークショップ:エビデンス・ベースドの大学の研究機能のマネジメント:産学官連携のあり方を中心に


【開催報告】はじめに、柴山准教授より、研究人材育成を通じた産学連携の現状についての網羅的な把握の成果が紹介された。まず、博士号を取得する研究人材に焦点を当て、どのような養成が行われることが論文の生産性を高めるかについて分析結果が示された。それによると、博士課程に自律的にテーマを決めて研究に取り組むことや、研究室のテーマとは異なるテーマに取り組むことがその後の論文生産性の高さにつながっているとのことであった。他方、産業界の人材ニーズの多くは修士号取得者に対するOJT教育であり、博士号取得者にあまり期待されていない現状があることも紹介された。もっとも社会人博士については満足度が高く、これが産学連携の一つの手段となりうることが指摘された。

次に吉岡(小林)特任助教より、大学が行う研究に対する社会からの受け止めについての調査結果が報告された。それによると、研究成果が社会的な課題を解決すると受け止められた場合に、当該研究活動に対する評価が最も高まり、研究成果が私的な利益につながると受け止められた場合には評価が大きく低下していた。産学連携は、成果が私的な利益につながるとの受け止めにつながる傾向があったが、地域の企業との本格的な連携については例外であったことも指摘された。現在、産学連携はますます強化することが求められているが、その中で私的な便益は強調されるべきではなく、産学連携の本来の目的である、成果の社会還元と社会課題の解決を強調すべきことが主張された。

この後、パネルディスカッションが行われ、大学が担うべき研究者教育と産業界が担うべき研究者教育の峻別の必要性、そして、社会課題の解決へのコミットメントの仕方について検討すべき課題があることが討論された。また、会場からは官側とのインタラクションのあり方など、幅広いコメントが出された。

休憩をはさみ産業界からの産学連携への期待や位置づけについての話題提供が行われた。

相川氏からは自動車製造業界、とくに欧州の自動車メーカーの産学連携について紹介が行われ、特にドイツを中心に製品化に近い領域で極めて高度・高額の設備を有した大学が産業界と連携し、欧州の自動車メーカーの強みを作り出していることが紹介された。

武本氏からは製薬業界における大学との組織的連携の実践例について紹介が行われ、産学双方に人材育成の利点があったことが紹介された。同時に、製薬業界では多数の技術シーズが必要であり、常に大学との連携が必要であることが強調された。

水野氏からは航空産業における国立の研究機関を通じた人材育成について紹介があり、産業界のニーズとしては必ずしも研究志向のトップ人材を多数必要としてない現状があることが紹介された。欧州でもこの傾向があり、大学側も実践的な人材を養成している傾向があることが紹介された。同時に、小数ながら研究志向のトップ人材も必要であり、これらの養成も必要であることが強調され、大事なのは養成する人員の規模やその担い手の役割分担であることが確認された。

パネルディスカッションでは、実学に明確なニーズがあることが確認されるとともに、研究志向のトップ人材の育成も並行して行われるべきことが議論された。この中で、日本の大学は総じて実学に弱く、また、設備に劣ることが指摘された。同時に、実学と言いながら、産業界側のニーズが明確に定義されていない、整理されていない可能性も指摘され、特に欧州の大学では何がニーズであるのかを明確に求められるとの実務経験が紹介された。このように、ニーズの明確化の議論と、大学の役割分担の必要性が確認された。
(東京大学大学院工学系研究科吉岡(小林)徹特任助教)

◆日 時:2018年 7月11日(水) 13:00~15:30
◆会 場:東京大学本郷キャンパス 国際学術総合研究棟4F SMBCアカデミアホール
◆参加費:無料
◆お申込:事前登録が必要です。こちらの フォーム から。
※登録フォームが開けない方は、メールにて、STIG@pp.u-tokyo.ac.jpまで所属、お名前をお知らせください。

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プログラム

●将来の研究機能醸成の観点からは何が効果的なのか?:
 博士課程教育についてのいくつかのエビデンス

 ルンド大学 経済経営学部  柴山 創太郎

●いま産学連携はどのように推移し、社会からは何を達成する
 ことが目指されているのか?:「イノベーション創出に
 向けた産学官連携」研究プロジェクトからの示唆

 東京大学 工学系研究科  吉岡(小林) 徹

●パネル討論 モデレーター/東京大学 工学系研究科  吉岡(小林) 徹

 大学の成果をどう社会に伝えていくべきなのか?

- 休憩 -

●産業界から大学に期待するものはなにか?
 自動車産業の視点から

   トヨタ自動車株式会社 車両技術開発部  相川 直樹

 製薬産業の視点から

   塩野義製薬株式会社 創薬疾患研究所  武本 浩

 航空・宇宙産業の視点から

   JAXA/宇宙航空研究開発機構 調査国際部  水野 素子

●パネル討論 モデレーター/東京大学 公共政策大学院  城山 英明

 社会との関係で大学はどのような研究力向上を目指し、成果還元を進めて行くべきなのか?/そのためには、どのような産学官連携の具体的仕組みが有用なのか?/そのような具体的仕組みの有用性を具体的状況に即して強化するにはどうしたらいいのか?/何が障壁なのか?
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問い合わせ先:STIG教育プログラム事務局
STIG@pp.u-tokyo.ac.jp