教員紹介

異分野の融合で新たなネットワークを

東京大学大学院 経済学研究科
教授 大橋 弘

 急激な少子高齢化を初めとする様々な課題を克服するためには、「科学・技術」によって得られた成果を新たな需要創造につなげるような「イノベーション」の役割に大きな期待がよせられています。この背景には、わが国における深刻な需給ギャップをいかに克服するかという政策的な課題からの要請だけでなく、これまで厳しい財政状況の中で科学技術に対する投資を継続的に行ってきたにもかかわらず、科学技術の成果が社会に十分生かされていないのではないか、という懸念が多分にあるように思います。従来を踏襲した形での科学技術政策ではわが国が直面する課題を乗り越えることができないとの強い危機感が「科学技術イノベーション」という言葉に表れています。

 「科学技術イノベーション」に関連する人材は実に多様です。研究が行われている産業や企業の現場の事例を調べる人もいるでしょうし、政策の定量的な評価を行いつつ何らかの提言を行う人もいるでしょう。或いは、座学では飽き足らず、実際にイノベーションを興すような取り組みを行う人もいるかもしれません。以上に挙げたいずれの人材も現在は個人レベルの活動に終始しており、中々広がりを持った動きに繋がっていません。STIGプログラムでは、そうした「科学技術イノベーション」に関わる人が学び実践する場としてのプラットフォームを提供できたら良いと私は思っています。点での活動を線で結び、さらに面的な広がりを持たせることによって、異分野の色々な考えを持つ人が意見を交流し合い、新しい見方やアイディアも浮かんできます。なにより志を共にするネットワークが生まれます。そうした問題意識を共有する異分野の人々の融合がまさにジョセフ・シュンペーター(オーストリア人の経済学者)の言う「イノベーション」の本質なのです。社会システム自体を変えていくようなイノベーションのネットワークがSTIGから生まれてくることを楽しみにしています。