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科目名 35. 市民社会組織・政策論
開設研究科:公共政策学教育部
科目番号:5122011
担当教員 田中 弥生
配当学期
/時間
S1S2
/金6限[18:45~20:30]
使用言語 日本語
単位数 2単位
教室 授業の実施形態(教室の場合は教室名、オンラインの場合はURL)については、UTASまたはITC-LMSから科目ごとに確認してください。
解説 「市民社会組織・政策論のめざすもの」
市民社会組織(非営利組織)が、政策的課題として本格的に取り上げられるようになったのは東西冷戦終焉直後からである。だが、主たる期待は社会サービスの補填機能であった。昨今、ポピュリズムや民主主義の危機が取りざたされる中で、大きな緊張感が生じている。こうした中で市民社会は正にも負にも作用する。そこで、ナチスなど歴史的変遷にも着目しながら、市民社会とその中軸を担う非営利組織について考察することが本講義の底流に流れる問題意識である。
2023年度においては、パブリックへの参加と、その担い手としての非営利組織に着目して講義を構成する。
社会課題の解決を自らの仕事のテーマ、ひいてはライフテーマにする人々が増えている。社会課題が横たわる領域は、多数の人々に影響をもたらすそれであり、ひいてはパブリックの領域(公共領域)と重なる。パブリックの領域は政府の占有物ではなく、社会情勢、市場の動向、規制などの法的条件の変化によって、常に変容する領域である。また、その担い手は行政機関などの公的機関に限らず、企業や民間非営利組織など多様な主体が担っている。
本講義は大きく2つの柱で構成する。
第1に、パブリック領域の中でも、個人や市民の自由意志と参加で築かれる民間非営利組織について学ぶ。ここでは、民間非営利組織に焦点を当てて、その存在意義を示す理論、さらにはマネジメントについて学ぶ。そして、パブリックの領域で活動する政府と非営利組織の関係性に着目し、官民協働にかかる政策とその影響に着目する。
また、非営利組織は市民、企業、そして行政機関などと連携を行っている。また、組織を維持運営し、社会的インパクトを生むためには多くの市民の支持を得る必要がある。しかしながら、非営利組織には企業(市場)、政府(選挙)に該当するユニバーサルな評価メカニズムが存在せず、支持対象としてのNPOの評価基準が曖昧である。非営利の評価研究はそのような背景から生まれた。ここでは、評価の基礎的な考え方、主要な技術について学ぶ。
第2に、パブリックに参加することに着目し、特に、この領域で働くことの意義について、各セクターからのゲストを招き、受講生と議論する。ゲストには、政府、民間営利(企業)、民間非営利のそれぞれ3つの組織で働く人々を招く。仕事の内容、そのプロセスを成果、個人にとっての動機などを聞きながら、自らの意思で社会課題の解決を通じて、パブリックに貢献することの成果と意義について議論する。
註)NPO、NGOは非営利組織と呼ばれることが多いが、営利を追求しない組織という意味しか説明しない名称であるという批判があった。そこで、民間の立場から公益や社会課題の解決を目的に活動する組織体を体現する名称として、市民社会組織(Civil Society Organization)という言葉が用いられることがあり、特に国際社会では一般的になっている。
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